みなさんこんにちは。
皆さんはアンバサダーという車をご存知でしょうか? インドの車と言えば「アンバサダー」 十数年前、シゲタトラベルを立ち上げた当初は インドに走っている自家用車は、ほぼこの車一色でした。 インドは、独立後長らく 国内産業保護を政策としていたため、 1991年に、通貨危機を契機として インドの経済が自由化されるまでは、 外国産の製品はほとんどありませんでした。 そのため、インドの車は、 この「アンバサダー」の独占状態。 西ベンガル州を拠点とする ヒンドゥスタン・モーターズという会社が製造。 タタと並ぶインドの大財閥のひとつ ビルラ財閥のグループ会社です。 この「アンバサダー」。 その起源はもちろん、 インドではありません。英国です。 第二次大戦後、 イギリスのナッフィールド社は、 知的職業に携わる人向けの大衆車 「モーリス・オックスフォード」 の販売を開始しました。 この「モーリス・オックスフォード」は 一躍脚光を浴び、 当時の社長は英国の植民地であった インドでの販売を模索します。 そして、1949年、ビルラ財閥の傘下 アンバサダー社との提携が実現し、 インドでの販売が開始されることになります。 これがインドの国産車 「アンバサダー」のはじまりです。 現在のモデルが登場したのは1959年。 当時はイギリスから輸入したパーツによって 制作されていたそうです。 その後、英国本土では、 モーリス・オックスフォードは消滅。 以降、 大きなモデルチェンジなしに生産されつづけ、 永くインドの政府要人にも愛用され、 また広くタクシーにも採用されて来たため まさにインドを代表する車、 「生ける化石」のような車ともいわれました。 トヨタやスズキ等日本車が台頭するまでは、 インド国民の憧れであり、 また身近な実用車でもありました。 長い間愛されてきたアンバサダーは、 現在も官僚や政治家、高級将校らの 運転手付き自動車として使われています。 青のアンバサダーは空軍、 黒は陸軍、白は海軍と政治家用。 ヒンドゥスタン・モーターズはこのたび、 半世紀以上にわたって 同国民に愛され続けてきた、 丸みを帯びたセダン「アンバサダー」の 生産を停止すると発表しました。 http://jp.wsj.com/news/articles/SB10001424052702304357604579589020077415290 アンバサダーは何十年にもわたって、 政府当局者が購入を認めてきた唯一の乗用車。 しかし、インドの自動車業界が より現代的なライバルに門戸を開く中で、 消費者の嗜好の変化を受けて、 生産停止を決めたとのこと。 西ベンガル州コルカタに本拠を置く ヒンドゥスタン・モーターズは24日、 アンバサダーを製造してきた工場を 無期限閉鎖すると発表。 同社はその理由として、低い生産性、 「危機的な資金不足」、それに 中核製品である アンバサダーの需要不足を挙げています。 この10年ほどの間、 経済規制が緩むにつれ、 ドイツのダイムラー、BMW、 ジャガー・ランド・ローバーといった 世界的企業はインドに工場を設け、 インドでの新乗用車販売数は 昨年は約250万台になったとか。 しかし、ヒンドゥスタンによると、 今年3月31日に終わった昨年度の アンバサダー販売数はわずか2214台とのこと。 CKビルラ・グループ傘下の企業である ヒンドゥスタンは当局への報告で、 生産停止は増大する債務を管理し、組織を再編し、 「工場再開に貢献できる状況をもたらす」 助けになるとしています。 アンバサダーの販売落ち込みは、 インド消費者の期待の 大きな変化を反映しています。 インドが英国から独立したあと、 アンバサダーは、 ほぼ閉鎖された経済の力を基盤に 独立独歩で歩むという 国民の熱望の象徴となりました。 工場の閉鎖は、 インドがこうした過去から離れよう とする中で発表されたといえます。 先の総選挙では 与党の国民会議派が敗れて インド人民党(BJP)が大勝を収め、 同党のモディ氏が首相となり、 同氏は選挙戦で経済発展と お役所仕事の排除を訴えました。 同氏は2008年、ナノを製造する タタ・モーターズの工場を 自分のグジャラート州に誘致するなど、 産業面でさまざまな成功を収めています。 *ナノは初心者レベル向けの安価な車。 アンバサダーの生産停止は、 インドなど開発途上国での 国民の消費意欲の向上が大きく影響しているとか。 同車の戦車のようなタフさは でこぼこ道路を走るのに適し、 何十年もの間インド全国のドライバーの心を虜にし、 また多くの大都市でタクシーとして使われています。 一部の消費者は、 アンバサダーは技術の進歩に ついてこられなかったとも。 ニューデリーのあるタクシー運転手は、 14年前に購入した同車は最後になるとし、 最新型について「エアコンは良くないし、 ボディーの金属は質が悪く、 金属であるべきねじはプラスチックだし、 エンジンの力も弱い」と評しています。 彼はスズキ自動車との合弁会社 マルチ・スズキの車に乗り換える計画で、 「値段は安いし、スペア部品も簡単に手に入る」とも。 アンバサダーの販売は、 政府が2010年に17都市での 排ガス規制強化の影響で打撃を受けました。 ヒンドゥスタンは昨年、 厳しい排ガス規制に合致した アンバサダーの新モデルを発売しましたが、 ライバル社と比べて値段が高すぎる こともあって、販売は好転しなかった模様。 新型のアンバサダー価格は約50万RS~、 タクシーにも使われている マルチ・スズキのワゴンRは約35万2000RS~。 ヒンドゥスタンは何年間も赤字を計上しており、 昨年10―12月の赤字は1億5500万RS。 スズキが1983年にインド政府との 合弁で市場に参入し、価格が安く、 燃費がいいマルチスズキの小型車は 着実に販売を伸ばし、現在では同社は インド最大の自動車メーカーになりました。 以下、ゼネラル・モーターズ(GM)、 フォード・モーター、現代自動車などの 世界的なメーカーが続きます。 ヒンドゥスタンは昨年、 工場の資金困難を回避するために 投資家を探していることを明らかにしていました。 同社の全般的な乗用車販売もうまくいっておらず 昨年度の販売数は3755台で、 07年度の1万2329台から大きく減少。 昨年度の販売数には アンバサダーと三菱自動車が含まれているとのこと。 インドからまた古き良き象徴が消えると思うと 少し寂しい気分になりますね。
by shigetatravels
| 2014-05-29 12:46
| インドニュース関連
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